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ジブリ映画「コクリコ坂から」が金曜ロードショーで放送されることになった。コクリコ坂からは、戦後20年近くが経ち、活気を取り戻し始めた日本の港町で繰り広げられる、知的層の若者の青春と、戦後の混乱の名残に翻弄される人々の生活を描き出した、ジブリの傑作だ。もともと漫画の原作があるが、映画版は少々設定が変わっているところがある。
舞台のモデルとなったのは、横浜だ。異国情緒溢れる港町のノスタルジックな情感がよく表現されている。ちなみに、コクリコ荘のモデルとなった建物は実在し、「根岸なつかし公園」内の旧柳下邸がそれにあたる。
ジブリ作品で言えば、「耳をすませば」も聖蹟桜ケ丘が舞台のモデルとなってファンを集めた。横浜はもともと観光地だが、山手などの古くからある街並みはあまり行ったことがない人も多いはずだ。コクリコ坂からを見て、横浜にいってみるのも良いかもしれない。
コクリコ坂からのあらすじ
コクリコ坂からのあらずしを極めて簡単にまとめていくと、以下のようになる。
・物語は2重構成。カルチェラタンの存続運動と、若い男女の難しい恋。
・カルチェラタンの存続運動を通して惹かれあった二人が、実は兄妹だったという悲しい事実が判明。結ばれない恋に辛い思いをする。
・以下、ネタバレに続く。
というストーリー構成だ。
観た方はお分かりになると思うが、本当にストーリー構成としては以上だ。だからこそ、この作品に対する評価は大きく二分する。ストーリーとしてはなんらひねりも面白みもなく、極めてさっぱりと流れていく作品なのだ。
どちらかといえば、異国情緒溢れる街並みであったり、主人公たちの心の揺れ動き、カルチェラタンのワクワクする内装の描写、ヒロインの純粋な乙女心など、ストーリーよりも細部を楽しむべき作品だと言える。
コクリコ坂からのネタバレ
以下は「コクリコ坂から」のネタバレとなるが、この物語の重要要素であった「血の繋がった兄と妹の、結ばれ得ぬ恋愛」という要素が、実は勘違いだった、ということで決着してしまうのだ。
ヒロインの松崎海の父と、風間俊の実の父親である立花、そして小野寺は3人親友同士だった。立花は妊娠中の妻を残して亡くなってしまうのだが、その妻も出産直後に亡くなってしまう。親友の子供が孤児になることが耐えられない松崎は、自分の子供として戸籍登録をしたものの、自分自身も子供が生まれるため育てられないと判断し、赤ん坊を亡くしたばかりの風間に預けたのだ。
戦後の混乱でもあり、かつ幼児医療が未発達の時代には、ありえない話ではない。むしろありふれた話だった。時代の波が、こうした歪みを生み、それが後の世の若い男女の恋愛に影響していたということだ。
結果的には、海と俊は血の繋がった兄妹ではなく、普通に恋愛をしてよいということになり、ハッピーエンドで終わるわけだ。
コクリコ坂からの最後のシーンへの評価
とはいえ、これこそがこのコクリコ坂からの評価を二分するポイントだ。結局、海と俊以外の周りの大人たちは、最初から皆知っていたのだ。
恋仲にある男女が、実は血が繋がっているという疑惑が生じるというストーリーのドラマは多数あるが、いずれもその過程で驚くような新事実や、苦労して自分たちの出自を解き明かしたりというシーンがある。ある意味、その謎解きの過程が面白いポイントでもある。
しかし、コクリコ坂からの場合、謎解きもなにもなく、普通に関係者全員が事実を知っていたのだ。勘違いに始まり、事実確認に終わるのだ。この最後のシーンが、物語を薄っぺらく感じさせる要因となっている。
結局、あらすじネタバレをまとめると以下のようになるのだ。
・物語は2重構成。カルチェラタンの存続運動と、若い男女の難しい恋。
・カルチェラタンの存続運動を通して惹かれあった二人が、実は兄妹だったという悲しい事実が判明。結ばれない恋に辛い思いをする。
(・カルチェラタンは存続。)
・勘違いだったと判明。
例えば、コクリコ坂からの一週間前に放送されたもののけ姫であれば、起承転結のあるストーリーと、その中で自然と人間、環境破壊、戦争など様々テーマが濃縮されており、まさに不朽の名作と言える。
コクリコ坂からに、そのような深淵さや重厚さは感じられない。ストーリーではなく、それ以外を楽しむべき映画なのだといえばそれまでなのだが、この点があるからこそ、コクリコ坂からに対しては、二分する評価があるのだ。
とはいえ、筆者個人的には、松崎海の精錬さや、乙女心の揺れ動きなどを見て、青春時代を思い出し、それがノスタルジックな世界観とマッチして、心持ちが変化するのを楽しむことができるこの「コクリコ坂から」という作品は、たまに見たくなるジブリ映画の名作だと評したい。