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三浦弘行は、現在日本将棋連盟に所属している現役棋士の内、9段の段位を持つ25名(うち3名はタイトル保持者)の一人である。将棋の世界を知らない人間にはそれがどれほどの地位なのか見当がつかないが、プロ棋士の最高段位が九段だというから、かなりの実力者であることは間違いないだろう。
その三浦弘行九段が、日本将棋連盟から年内の公式戦出場を停止される処分を受けた。将棋連盟は休場届の不提出を処分の理由としているが、これにも裏の事情があるようだ。
出場停止の理由はカンニング?
「竜王戦七番勝負」の挑戦者変更の発表があったのが12日。挑戦者に決まっていた三浦九段は、その立場から降ろされ、年内の出場停止処分を受けた。
竜王戦とは、女流棋士を含む全棋士、アマチュア棋士などがトーナメントを行い、勝ち残った一人が挑戦者となり、竜王と対戦する棋戦である。
毎年10月から12月にかけて、全部で7つあるタイトルの最高位である竜王と七番勝負を行うもので、勝利すると竜王のタイトルが得られるという、将棋界最高峰のタイトル戦である。
その栄誉ある挑戦者だった三浦九段がその権利を奪われた理由は、なんとカンニング疑惑だった。三浦九段が、対局中にスマートフォンで将棋ソフトを使い、自分の指し手を決めていたという疑惑である。
過去に対戦した棋士から、三浦九段が対局中に席を離れることが多く、不正をしている疑いがあるという指摘があり、将棋連盟が聞き取り調査をしたところ、本人はその疑惑を否定したという。
しかし、そういう疑惑を持たれたままで対局することはできないと、三浦九段は休場を申し出た。ところが、その休場届が期日までに提出されなかったとして、連盟は三浦九段の年内出場停止を決めたのである。
この処分は重いのか軽いのか。素人には、休場届が間に合わなかったぐらいのことで出場停止処分など重すぎるのではないかと感じられる。しかしこれが、不正が原因での処分だったとしたらたかだか2ヶ月程度の出場停止では、あまりにも処分が甘いように思える。
その後、連盟が処分理由を「休場届の不提出を含む一連の疑惑に対するもの」だと明かしている。すると、この処分は疑惑が浮上したことに対するものであり、不正そのものに対するものではないということだろうか。
つまり、この件に関しての調査はまだ続けられるということだと思われる。
濡れ衣だという噂も
三浦九段は処分発表後の18日「適正な手続きによる処分とは言い難い」とのコメントを発表。席を離れたのは休憩室などで体を休めながら次の指し手を考えるためだったとし、対局中に将棋ソフトを使用したことを否定した。
確かに、席を離れる回数が多いだけで、将棋ソフトを使っていたという疑惑には結びつかない。それではこの疑惑の根拠は何なのか。それは、三浦九段と将棋ソフトの指し手との『一致率』だという。つまり、席を外して戻って来た後に指した手が、将棋ソフトの手と一致する確率が高かったのである。
その点を三浦九段は、対局前に将棋ソフトを使って研究しているためであると説明し、所有するパソコンを既に連盟に提出している。パソコンやスマートフォンの履歴を調べれば、ソフトの使用未使用がはっきりするのではないだろうか。
その結果、もし三浦九段が不正をしていないということが証明されたとしたら、これは相当な名誉棄損である。
将棋ソフトは強いのか
もし仮に三浦九段が将棋ソフトを使っていたとしたら、その将棋ソフトはプロの棋士をも負かす実力を持っているということになる。将棋ソフトとはそれほどに強いものなのだろうか。
開発者は「コンピュータの将棋の考え方は人間とは大きく異なる。砂漠にある一粒のダイヤモンドを、人間は目星をつけ直感を頼りに見つけ出す。コンピュータはブルドーザーのように圧倒的な計算力を使って探し出す」と、その差を表現している。
直感と計算力。人間の直感を信じたい気持ちもあるが、コンピュータがその計算力とともに学習能力を備えているとしたら、人間に勝ち目はないように思う。2010年代に入り、コンピュータはトップ女流棋士や元トップ棋士に勝利をおさめ、2014年には現役のプロ棋士5人を相手に4勝1敗と勝ち越している。
人間の頭脳が、自分たちの作った機械に負ける。その未来は明るいのだろうか暗いのだろうか。
今回の不正が証明されるか疑惑に終わるか、今のところ分からない。しかし、プロ棋士として上位にいる人間がコンピュータに頼っていたかもしれないという疑惑は、将棋を知らない人々にも衝撃を与えた。
プロ棋士でさえ、そんなものに頼らなければならないのかという落胆。プロ棋士でさえ頼るコンピュータというものへの脅威。人によって受け取り方は違うだろうが、もし本当に三浦九段が不正を行っていたとしたら、彼はその両方を感じていたのではないかと思う。