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昨年12月に女子社員が過労自殺し過労死と認定されたことを受け、厚生労働省は労働基準法違反の疑いで、電通本社と各地の3支社に強制捜査に入った。
先月行われた立ち入り調査に続き、今回は異例ともいえる88人の捜査員をつぎ込んだ大規模な捜査である。結果によっては、刑事事件として立件されることも視野に入れているという。
もし立件された場合、逮捕者が出ることはあるのだろうか。
電通へ強制捜査が!
7日午前9時半ごろ、東京・汐留の電通本社の前に厚労省東京労働局、過剰労働撲滅特別対策班の職員約30人が到着した。同時に関西支社(大阪市)、名古屋支社、京都支社にも、各地の労働局職員が入った。女子社員の過労自殺に関し、労働基準法違反容疑の強制捜査である。
先月に任意の立ち入り調査が行われているが、今回は捜査令状を取った上での強制捜査である。悪質性が高いことが強制捜査に踏み切った理由である。
東京本社の捜査は6時間余りにも及び、押収物の入った段ボールが次々と運び出された。
厚労省はこの資料を分析し、容疑が固まれば、電通という会社そのものと担当者を書類送検する方針であるという。
その強制捜査が行われているさなかの午後1時、社内のホールには社員が集められていた。石井直社長が社員に対して、一連の事態について直接説明するためである。社員の関心は高く、ホールは満席状態。別会場や支社には同時中継を、社員のパソコンにはストリーミング放送も行われたという。
石井社長はまず、「厚労省の捜査に全面的に協力していく」と宣言。業務量の削減と分散化、業務プロセスの見直しを進め、社員の働き方の多様化や人材育成・人事評価・組織運営の在り方の変革に取り組むことを表明した。月間時間外勤務の上限を下げ、22時以降の業務を禁止し、全館を消灯するなどの対策を説明。最後に「チーム力を結集し、社が直面する課題を共に克服し、新しい電通を作り上げていこう」と、50分の集会を締めくくった。
石井社長が一般社員に直接説明する機会を持つのは初めてのことだが、その表情は終始険しかったようだ。
石井直社長の経歴は?
石井直社長は、上智大学外国語学部イスパニア語学科を卒業後、1973年に電通に入社。ソニーなどを担当する19営業局の局長、2002年に常務執行役員国際本部副本部長、2006年に常務取締役アカウント・プランニング統括本部長、2009年に取締役専務執行役員を経て、2011年に代表取締役社長に就任。第12代目にして初の営業畑出身の社長となった。
社長就任後、電通オーストラリアが営業を開始、オセアニア地域への事業拡大を図った。またイギリスのデジタル・マーケティング会社を買収、スポーツイベント運営会社を子会社化するなどの活躍を見せている。
営業畑を歩いて来た人物であるということは、電通社員の基本原則である『鬼十則』を叩き込まれ実践してきたのだろうか。『鬼十則』とは、4代目社長の故吉田秀雄氏が定めた10箇条で、社員はそれに沿った行動を求められるという。
「取り組んだら放すな。殺されても放すな。目的完遂までは」「難しい仕事を狙え」「大きな仕事に取り組め」など、仕事のやり方に対する格言であるが、石井社長が今回発表した変革はこの10箇条を否定するような内容であると、不満を漏らす社員もいるようだ。
社員以外からも電通に関する意見は数多い。過労死さえ免れたものの、長時間労働に疲れて退職を余儀なくされた元社員の見方は冷ややかだ。「根本的なビジネスモデルが変わらない限り、ほとぼりが冷めたら元に戻るのでは」と予想する。
現にここ数年の内に、2回も東京労働局から是正勧告を受けているのである。今回の強制捜査をきっかけにその体質を改善できなければ、また同じことを繰り返すだろう。
元社員の男性は全館10時消灯について「(仕事が)10時に終わるわけがない」と断言する。このIT時代、パソコンごと仕事を家に持ち帰れば何時まででも仕事は続けられるのだ。社内を暗くしてもこの問題は解決しないということである。
今回の捜査で人事担当者などに逮捕者が出たとしても、それはトカゲのシッポ切りに過ぎないのかもしれない。そしてほとんどの電通社員は、間違っていると知りながらも法に触れる形で働き続けるのだろう。そして、日本には第二第三の電通が山ほどある。
高橋まつりさんの死が報われる日がくるのだろうか。